2023年(令和5年)のダイビング事故統計

2023年(令和5年)のダイビング事故統計

2024年6月に海上保安庁が発行した「令和5年 海難の現況と対策 ~大切な命を守るために~」より、2023年のスクーバダイビングでの事故統計を紹介します。

※グラフは「令和5年 海難の現況と対策 ~大切な命を守るために~」(海上保安庁)のデータを加工して作成したものです。

過去10年のスクーバダイビング事故者数

2024年のダイビング事故は48件。過去10年では2027年に次いで2番目に多い数字となっており、2021年から事故数は増加傾向にあります。コロナ禍の行動制限もあってダイビング機会が減少していたであろう2020年、2021年に比べ、自由にダイビングができるようになったことから、ダイビング機会が増加したこと、コロナ禍でダイビングから遠ざかっていたブランクダイバーが復帰してきていることなどが、ダイビング事故の増加につながっているのではないかと考えられます。死者・行方不明者数も16名と前年より増加し、こちらも2021年から増加傾向に。2018年、2020年の17件に次いで多い数字となっており、事故数を減らすことはもちろんのこと、いかに重大事故につなげないかということも重視したいポイントです。

R5グラフ2事故内容別

事故内容別の事故者数では「溺水」が最も多く19人(39.6%)。ダイビング事故は水面や浅場でも多く発生しており、どんなシーンでも油断は禁物です。次いで多いのが「病気」の14人(29.2%)。前年の8名から増加しており、事故者における中高年が占める割合の高さ(年齢別事故者数参照)も関連していると考えられます。また、前年は3人だった「帰還不能」が2023年は13人(27.1%)と大きく増加しており、ドリフトダイビングによる漂流事故などがここに含まれています。

R5グラフ6溺水事故原因
R5グラフ7潜水経験別事故者数

事故内容で最も多かった「溺水」の事故原因を見ると、実施中の活動に対する不注意(5人)、健康に対する不注意(3人)と、不注意が原因であるものが多いようです。知識技能不足(2人)とあわせ、半分以上がダイバー自身に原因があるものなので、ダイビングを安全に楽しむのに必要な知識・スキルをしっかりと身につけ、常に高い安全意識を持ってダイビングするようにしましょう。潜水経験(本数)別の事故者数を見ても、100~500本未満の経験を持つダイバーの事故者数が最も多く15名。500本以上の7名も合わせると、約48%と半数近くを占めており、ベテランダイバーも油断は禁物ということがわかります。

R5グラフ3年齢層別

年齢層別の事故者数では、50歳代が最も多く14人(29.2%)。次いで40歳代が11人となっており、40歳代と50歳代で事故者の半数以上を占めています。60歳代、70歳代も含めた中高年でみると7割以上に。日頃の体調管理や持病のケアをきちんとし、自分の体力を自覚して、無理のないダイビングをすることが大切です。一方で20歳代や30歳代にも事故者はおり、どんな年齢でも油断は禁物ということがわかります。

R5グラフ4月別

月別事故者数を見ると、最も多かったのは4月と6月の9人。いずれもダイバーのグループが漂流した事故が含まれているため、人数が多くなっています。次いで多いのは8月、9月の7人ですが、ダイビングの機会が増える夏場だけでなく他の月でも事故は発生しており、12月を除くすべての月で事故が発生しています。

⇒海上保安庁「令和5年 海難の現況と対策 ~大切な命を守るために~」

新型コロナウイルス感染症による制約もなくなり、自由にダイビングを楽しめるようになった今ですが、ブランクがあいてしまっていると、久しぶりのダイビングでストレスを感じてしまったり、いざというときに慌ててしまってスムーズに対処できないことも。まずはリフレッシュダイビングをするなどして、改めて安全にダイビングを楽しむために必要な知識やスキルをしっかりと再確認し、安全管理に高い意識を持って楽しむことを心がけましょう。

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この記事を書いた人

高校卒業時にダイビングを始め、大学生のときにインストラクターに。大学卒業後、(株)水中造形センターに入社し、『マリンダイビング』『海と島の旅』『ダイビングスクール』各誌の副編集長を務める。2010年からは世界最大のダイビング教育機関PADI日本オフィスでマーケティング・広報・ウェブコンサルティングなどを担当。2019年からは再び(株)水中造形センターにて、WEB編集部・部長/マリンダイビングWEB編集長に。現在はスナイプバレー合同会社の代表として、スキューバダイビングの普及・啓蒙に加え、海の環境保全活動にも努めています。

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